• 予告篇90秒
  • 予告篇30秒

22歳のおきくは、武家育ちでありながら今は貧乏長屋で父と二人暮らし。毎朝、便所の肥やしを汲んで狭い路地を駆ける中次のことをずっと知っている。ある時、喉を切られて声を失ったおきくは、それでも子供に文字を教える決意をする。雪の降りそうな寒い朝。やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで、精一杯に気持ちを伝えるのだった。
江戸末期、東京の片隅。おきくや長屋の住人たちは、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営む。そんな彼らの糞尿を売り買いする中次と矢亮もまた、くさい汚いと罵られながら、いつか読み書きを覚えて世の中を変えてみたいと、希望を捨てない。お金もモノもないけれど、人と繋がることをおそれずに、前を向いて生きていく。そう、この「せかい」には果てなどないのだー。

つらく厳しい現実にくじけそうになりながら、それでも心を通わせることを諦めない若者たちを描く『せかいのおきく』。日々を生きる喜びと輝きを感じ、人と人のぬくもりに包まれる、90分の愛おしい青春映画が誕生しました。ヒロインのおきくは、ある悲惨なできごとに巻き込まれて声を失います。演じるのはベルリン国際映画祭や三度の日本アカデミー賞に輝く名女優、黒木華。そのセリフの無い名演をぜひご覧ください。他にも日本映画を代表する名俳優たちが集まりました。脚本と監督は数々の名作を作ってきた阪本順治。貧しくもたくましく生きる長屋の住人たちをみずみずしく描く、阪本監督の最高傑作です。また、映画のテーマについて企画・プロデューサーの原田満生はこう語ります。
「江戸時代は資源が限られていたからこそ、使えるものは何でも使い切り、土に戻そうという文化が浸透していました。人間も死んだら土に戻って自然に帰り、自然の肥料になる。人生の物語もまた、肥料となる。自然も人も死んで活かされ、生きる。この映画に込めた想いが、観た人たちの肥料になることを願っています」
本作は、気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、様々な時代の「良い日」に生きる人々を描き「映画」で伝えていくYOIHI PROJECTの第一弾作品です。